公益社団法人 日本水道協会

会員提出問題

 現在、我が国の水道は、人口減少化社会に伴い水道料金収入が伸び悩む中、老朽化施設の更新、災害に強い施設の再構築など様々な課題に直面しています。
 そうした中、本協会では、全国7地方支部総会の決議を経て提案された、各事業体独自では解決が難しい重要かつ緊急の課題について、令和4年10月19日に名古屋市にて開催した第101回総会において、問題解決に向けた討議を行いました。
 討議の結果、国に解決を求めるべきとされた問題について、直近の運営会議において陳情文書、陳情先等を諮ったうえ、国会議員・関係省庁に対して強力な陳情を実施し、問題解決に努めていきます。

 本ページでは、第101回総会において討議を行った会員提出問題を掲載いたします 。

第101回総会 会員提出問題

Ⅰ.防災・減災、国土強靱化

(東日本大震災関係)

1.放射性物質に係る対応の推進及び東京電力福島第一原子力発電所の事故を原因とする損害賠償について

提案地方支部:東北、中部地方支部
要望事項
  1. 国及び東京電力ホールディングス㈱の責任において、放射能濃度が8,000Bq/kgを超える放射性物質を含む浄水発生土について、処分地の確保など速やかに処理を進めること。
  2. 各水道事業者が放射性物質対策に要したとして請求している費用については全額を速やかに支払うとともに、今後においても、水道事業者ごとに置かれた個別事情を踏まえた必要な追加的費用の賠償を継続するよう、東京電力ホールディングス㈱に強く働きかけること。
提案理由

 東京電力福島第一原子力発電所の事故により拡散した放射性物質は、事故から11年以上が経過した現在でも、依然として水道事業運営に多大な影響を及ぼしている。
  放射性物質を含む浄水発生土の放射能濃度が8,000Bq/㎏を超える指定廃棄物の処理については、放射性物質汚染対処特措法等において、国が最終処分場を確保して進めることとされているが、それまでの間は、排出者である水道事業者が仮置き保管することとされており、いまだに浄水場等での保管を余儀なくされている。
 また、当該事故を原因とする損害賠償については、水道事業者ごとに東京電力ホールディングス㈱との間で賠償の合意形成が必要となっていることに加えて、放射性物質の流入を防ぐための遮蔽、水道水のモニタリング、放射性物質除去効果のある粉末活性炭処理等、放射性物質対策に要した費用の全てを賠償するものとはなっていない。
 このため、各水道事業者が経済的な負担を負いながら対応している状況にあることから、原因者である東京電力ホールディングス㈱には、正当な賠償請求全てに対し、誠実かつ速やかな対応が求められる。
 よって、浄水発生土の適切な処理等、水道事業を円滑に運営するとともに、国民の不安を一日も早く解消し、健康と安全・安心な生活環境を確保するため、万全な対策を早急に講じることを国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 東北地方支部のいわき市より提案理由が説明された。
 新潟市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

(災害対策関係)

2.水道施設の災害対策に対する行財政支援等について

提案地方支部:東北、関東、中部、関西地方支部
要望事項
  1. 水道施設災害復旧工事(給水装置工事も含む。)を「公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法」に規定し、「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」の対象とするとともに、財政援助のより一層の充実・拡充を図ること。
  2. 管路のループ化や多重化工事など、災害時におけるバックアップ機能を備えるための事業を補助対象とすること。
  3. 配水場の場内連絡管の耐震化対策に係る費用を補助対象とするとともに、伸縮可とう管をその対象に含め、複数年にわたる事業にも対応が可能とすること。
  4. 応急給水用資機材等や加圧式給水車の整備に係る費用を補助対象とすること。
  5. 災害からの復興の円滑化に資するため、国、行政部局、水道事業者及び関係団体間における連携強化のための支援体制の構築等に係る措置を検討し講じること。
  6. 内閣府の「大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ」の検討結果を踏まえた、富士山噴火時の国や水道事業者の連携方法の検討及びマニュアルを作成すること。
  7. 上水道施設災害復旧費補助金の現在給水人口から算定される適用除外限度額を引き下げる等、算定基準の緩和を図ること。
  8. 災害時において、機動的な予算執行等が可能となる公営企業会計制度の仕組みについて検討し対策を講じること。
  9. 水道施設が甚大な被害を受ける恐れがある「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」等に指定されている地域については、必要な施設整備の財源措置として、普通会計債の防災対策事業債及び緊急防災・減災事業債を水道事業まで対象を拡大すること。
提案理由

 水道は国民生活や産業活動を支える重要な基盤施設であり、大規模地震や集中豪雨等の自然災害が発生した場合においても、飲料水等生活に必要な最低限の水を供給することが水道事業者に求められている。
 阪神・淡路大震災、新潟県中越沖地震、東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年北海道胆振東部地震をはじめとした地震災害はもとより、平成30年7月豪雨、令和元年房総半島台風及び東日本台風等においても、水道施設は甚大な被害を受け、長期間にわたり国民生活や都市活動に重大な支障を来し、我が国のいずれの地域においても、災害対策は必要不可欠なものと再認識されたところである。
 こうした中、発生の確率が高いとされている南海トラフ地震や首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、さらには近年頻発している豪雨災害等への備えとして、水道事業者は、ハード面では管路を始めとした水道施設の耐震性の強化、災害時の給・配水拠点となる配水池の増設、停電・浸水対策の強化、応急給水用資機材や非常用貯水施設の整備等、ソフト面では国が示す危機管理対策マニュアル策定指針を基に、各種マニュアルの作成とともに訓練の実施を鋭意進めている。
 令和2年には、「大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ(内閣府)」により、富士山は宝永噴火から300年以上が経過し、いつ噴火してもおかしくない状況であることから、富士山噴火をモデルケースとした降灰予測や測定される影響が示されたところであるが、ひとたび富士山が噴火すると、被害は広域にわたることが想定されており、富士山噴火時における国や水道事業者の連携も必要不可欠となる。
 しかしながら、災害対策に要する事業費は、水道事業経営に及ぼす影響が非常に大きいところではあるが、その効果は広く地域の防災機能の強化に寄与するものであることから、財源の全てを水道事業者が負担することのないよう十分な国の支援が必要である。
 また、各種補助制度はこれまで随時拡充が図られてきたところであるが、被災後の水道施設災害復旧について、市町村合併の進展と簡易水道事業の上水道事業への統合により、上水道事業の給水人口が増加している水道事業者においては、現行の補助要綱では補助の適用除外となる場合があり、被災時の財政負担が大きい状況にある。
 さらに、近年、各種自然災害が懸念される中、水道施設が甚大な被害を受ける恐れがある「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」等に指定されている地域において、災害発生時においても水道がその機能を維持できるよう、災害に対し万全に備えるための水道施設整備が急務とされているが、普通会計債の防災対策事業債及び緊急防災・減災事業債について、水道事業が対象となっていないことから、必要な水道施設整備の財源措置として不十分な状況にある。
 加えて、水道施設等が被災した際に、直ちに復旧し水道水供給を確保するためには、発災時に速やかに予算執行可能とする仕組みを整え、機動的に対応する必要性があるが、現行制度の下における補正予算等による対応は手続きに一定期間を要することとなる。さらに、復旧に係る費用の財源確保のためにも、災害に備えた引当金の計上が認められるよう制度の見直しが必要であると考える。また、被災した施設・設備の残存価値はゼロになり、当該年度において多額の除却損が発生することになることから、災害損失の繰延資産への整理が必要と考える。
 よって、地震等自然災害に対する強靱な水道施設の整備を推進するとともに、被災後の速やかな応急対策及び復興が図れるよう、ハード及びソフトの両面において災害対策に対する行財政支援等を国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 東北地方支部の福島市より提案理由が説明された。
 福岡市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

3.防災・減災、国土強靱化のための持続的かつ安定的な行財政支援について

提案地方支部:東北、関東、関西、九州地方支部
要望事項
  1. 近年激甚化する風水害や切迫する大規模地震への対策として、水道施設の停電・土砂災害・浸水災害対策及び水道施設・管路の耐震化について持続的かつ安定的な財政支援を図ること。
  2. 「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に係る採択基準における資本単価等の要件を撤廃又は緩和し、交付対象事業を拡大するとともに、近年の大規模な風水害等を踏まえ、今後、危機管理対策の拡充を進めていく必要があることから、期間を延長すること。
  3. 土砂災害・山地災害・浸水災害等の指定区域から水道施設を移転する場合においても、活用できるよう適用要件を拡大すること。
提案理由

 国においては、平成30年7月豪雨や平成30年北海道胆振東部地震等を踏まえ、全国の水道事業者を対象に、重要度の高い水道施設の災害対応状況について緊急点検が行われ、平成30年度から令和2年度の3か年で集中的に緊急対策を実施する「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」に基づき水道施設の停電・土砂災害・浸水災害対策や基幹管路等の耐震化を推進してきた。
 また、令和3年度からは引き続き、これらの対策の加速化・深化等を図るため新たに策定された「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づき、水道施設における自家発電設備の整備、土砂災害・浸水災害の対策工事及び基幹管路の耐震化の加速・深化などを図り、水道施設の耐災害性強化及び管路の耐震化対策を推進するための施設整備等に対しての財政支援が行われている。
 しかしながら、当該補助金及び交付金においては、従来どおり資本単価等の採択基準及び交付対象事業が付されていることから、危機管理対策上必要な事業を実施するにあたり、この基準等を満たさないと補助対象とならないことに加え、5か年という期間の限られた財政措置であることから十分に事業が進まないことも懸念される。
 よって、我が国全体の水道の防災・減災、国土強靱化を図るため、技術的な考え方の整理を行うとともに、持続的かつ安定的な行財政支援及び採択基準の緩和等適用要件の拡大を国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 関西地方支部の兵庫県より提案理由が説明された。
 福岡市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

4.水道事業における電力確保対策等について

提案地方支部:関東、中部、関西地方支部
要望事項
  1. 電気事業法第27条に基づく電力使用制限及び計画停電を実施する際は、水道事業を対象から除外すること。
  2. 水道用薬品の安定供給体制が確保できるよう、薬品製造メーカーについても、電力使用制限及び計画停電の対象から除外すること。
  3. 停電時に使用する自家発電設備の石油燃料を水道事業へ優先して供給できる体制の整備及び緊急時の輸送手段を確保すること。
  4. 大規模災害時には、電力会社の停電復旧作業が迅速に完了するよう、電力事業者間の相互応援等、一層の支援体制を構築すること、また、広域的な停電が発生した場合には復旧見込み・影響範囲等の情報を関係者に可能な限り速やかに提供することを電力会社に働きかけること。
提案理由

 東日本大震災の影響により電力会社の電力供給力が低下し、平成23年の夏季は電気事業法第27条に基づく電力使用制限令が実施され、平成24年の夏季にも計画停電が準備されるなど、関係する水道事業者においては、自家発電設備の増強運転、ポンプ送水量の減量など、受電量を減らすため、様々な厳しい対応が求められた。併せて、浄水場で使用する薬品の多くは、塩化ナトリウムの電気分解等により製造されており、その製造にも安定的な電力供給は不可欠である。
 水道は、国民の日常生活及び社会経済活動の安定と発展を支える基盤として欠くことのできないものであり、計画停電・電力使用制限の実施、また、自然災害等に起因する大規模停電は、水道水の安定供給に甚大な影響を及ぼすものである。
 また、自家発電設備用燃料に関して、東日本大震災時にはその調達に苦労した事例が多く、調達経路の確保が必要となるが、民間企業等との交渉などは水道事業者単独での対応は困難であることから、関係機関に対する国からの指導等が必要である。
 よって、安全で安定した水道水の供給を持続するため、水道事業における電力確保対策等を国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 中部地方支部の豊橋市より提案理由が説明された。
 福岡市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

Ⅱ.水道の基盤強化

(新型コロナウイルス感染症関係)

5.新型コロナウイルス感染症による影響に係る水道事業経営への支援について

提案地方支部:関西地方支部
要望事項
  1. 新型コロナウイルス感染症の影響により減少した水道料金収入に対し、必要な財政措置の拡充を図ること。
  2. 新型コロナウイルス感染症対策に係る水道料金の減免措置を行った結果、料金回収率の下がった水道事業者に対して、生活基盤施設耐震化等交付金等の採択基準を緩和すること。
提案理由

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大による社会経済活動の停滞に伴い、各水道事業者の水道料金収入が減少するなど、事業経営への影響は避けられない状況が続いている。
 こうした中、水道事業者が水道料金を減免する場合、一般会計等から公営企業会計への繰出に対して「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」の対象とすることが示されたが、今般の社会経済活動の停滞等に伴う水道料金収入の減少は、水道事業者の責によらない災禍であり、水道事業者による経営努力の範疇を超えている。
 加えて、水道料金の減免措置を行った結果、料金回収率の下がった水道事業者に対して、生活基盤施設耐震化等交付金等の採択基準から外すことなく、本来どおり交付を受けられるよう採択基準を緩和するなど、現状の交付金制度についても柔軟な対応が求められる。
 よって、今後、影響の長期化が見込まれる中で、水道事業を安定的に運営するため、新型コロナウイルス感染症による影響に係る水道事業への適切な支援を国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 関西地方支部の奈良市より提案理由が説明された。
 横浜市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

(補助関係)

6.水道事業に対する財政支援の拡充及び要件の緩和等について

提案地方支部:北海道、東北、関東、中部、関西、中国四国、九州地方支部
要望事項
【水道水源開発等施設整備費】
  1. 水道水源開発施設整備費、水道施設機能維持整備費及び高度浄水施設等整備費において、次の事項を実現するほか、採択基準における資本単価要件等の撤廃又は緩和、補助対象事業・施設の拡大及び補助率の大幅な引き上げを図るとともに、交付に当たっては、補助対象事業者の要望額とし、交付決定を早期化すること。
    ①水道水源開発施設整備費において、ダムの大規模改修事業を補助対象に加える。
    ②水道施設機能維持整備費において、既存自家発電設備の更新・改良や施設の覆蓋化を補助対象とする。
    ③高度浄水施設等整備費において、交付額の算定に係る基準事業費を撤廃する。
【生活基盤施設耐震化等交付金】
  1. 緊急時給水拠点確保等事業のうち、次の事項を実現するほか、採択基準における資本単価等の要件の撤廃又は緩和、交付対象事業・施設の拡大及び交付率の大幅な引き上げを図るとともに、交付に当たっては、交付対象事業者の要望額とし、交付決定を早期化すること。
    ①基幹水道構造物の耐震化事業において、交付対象事業費の算定基準の見直しを図るとともに、基幹水道構造物の耐震化事業と併せて実施する長寿命化工事(防食塗装等)についても交付対象とする。
    ②重要給水施設配水管において、水道料金等に係る採択基準を撤廃するとともに、令和元年度補正予算で拡充された緊急対策に係る配水支管への財政支援を継続する。
  2. 水道管路耐震化等推進事業のうち、次の事項を実現するほか、採択基準における資本単価等の要件の撤廃又は緩和、交付対象事業・施設の拡大及び交付率の大幅な引き上げを図るとともに、交付に当たっては、交付対象事業者の要望額とし、交付決定を早期化すること。
    ①老朽管更新事業において、水道料金に係る採択基準を撤廃又は緩和する。
     また、布設後20年以上経過した全ての管種を対象とし、配水支管までを交付対象とする。
    ②水道管路緊急改善事業において、採択基準における水道料金、給水収益に占める企業債残高等の指標値を撤廃又は緩和するとともに、長期的な更新計画を策定し、計画的な更新事業を実施する水道事業者を全て交付対象とする。
     また、布設後20年以上経過した全ての管種を対象とし、配水支管までを交付対象とする。
    ③鉛管更新事業において、交付対象に給水管の更新事業を加える。
    ④送水管の多重化事業を交付対象とする。
  3. 水道事業運営基盤強化推進等事業のうち、広域連携がより促進されるよう、次の事項を実現するほか、採択基準における資本単価及び人口要件等の撤廃又は緩和、交付対象事業・施設の拡大及び交付率の大幅な引き上げを図るとともに、交付に当たっては、交付対象事業者の要望額とし、交付決定を早期化すること。
    ①広域化事業において、地域の実情を踏まえ、事務所の統合整備及び水平統合だけでなく垂直統合も含めた広域化が促進されるよう老朽化施設の更新・耐震化についても交付対象とする。
     また、事業統合や経営一体化の要件を緩和するとともに、時限措置を撤廃する。
    ②広域化のモデル事業を指定し、モデル事業に対する交付要件を緩和する。
    ③最終年度に2か年分交付される交付金について、交付期間を1年延伸し、1か年ずつ交付する。
  4. 水道施設再編推進事業について、複数の末端給水を行う水道事業者の施設を廃止して用水供給事業者の施設を増強(バックアップのための送水施設等を含む。)する施設の再構築を行う場合の費用を対象とするとともに、資本単価や施設廃止数の要件を緩和し、廃止のみの事業も対象とすること。
  5. IoT・新技術活用推進モデル事業において、小規模事業者及び地理的に隔絶された集落を抱える事業者に対しては、IoTやAIなどを活用した施設運転の自動化やスマートメーター導入等による事業効率化が有効な方策となるため、必要とする事業者が補助対象となるよう、採択条件を緩和するとともに、採択基準を明確にし、今後も先端技術に対する財政支援を積極的に図ること。
    なお、スマートメーターの導入促進を図るため、低電力・広範囲・ローコストの通信方式LPWAによる通信基盤の普及拡大と通信費の低減に向け、国において対応を図ること。
  6. 電気・機械設備、監視制御設備等、比較的耐用年数の短い設備更新及び浄水場の設備改修に対する交付金制度を創設する。
  7. アセットマネジメントに基づき資本費の抑制に努めている水道事業者、経年施設を多く有する水道事業者に重点的に措置される補助制度とすること。
  8. 資本単価算定の際の有収水量について、今後の水需要の減少傾向を反映した経営戦略等の最新の推計値の使用も可能とすること。
  9. 全国一律に適用される施設基準等について、必要性・合理性を検証し、地域の実情に応じて柔軟に事業運営できるよう地方の裁量を拡大すること。
  10. 道路法に定められた道路占有者に係る占有物件の維持管理義務について、老朽管に起因する道路陥没事故等防止のため、道路占有している水道管路の耐震化や更新に係る維持管理に必要な費用に対する財政支援を図ること。
提案理由

 水道事業者は、安全で良質な水道水を安定的に供給するため、より信頼性の高い水道の整備・運営に努めているところである。
 特に、地震等の災害に対して強靱な水道施設を整備するため、耐震化の推進及び老朽施設の更新・再構築に全力を傾注しているところであり、加えて、水道を取り巻く環境の変化や一層多様化する水道使用者のニーズへの対応が求められている。
 また、病原微生物・有害化学物質等の新たな水質問題に対応した水質管理体制の強化、施設の整備、並びに安定的な水源の確保への取組を実施することが、喫緊の課題となっている。
 さらに、人口減少に伴う料金収入の減収による収益構造の悪化や水道事業に携わる職員数が減少する中、改正水道法を踏まえ、水道の基盤強化が求められている。
 これらの事業の推進並びに課題の解決には多額の資金が必要であり、国の持続的かつ安定的な財政支援が不可欠である。
 よって、これらの事業の円滑かつ確実な推進に向けて、水道事業に対する財政予算を十分に確保するとともに、支援の拡充及び要件の緩和等を国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 九州地方支部の長崎市より提案理由が説明された。
 旭川市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

7.水道施設の更新・再構築事業に対する新たな財政支援体制等の確立について

提案地方支部:東北、関東、中部、関西地方支部
要望事項
  1. 水源・取水施設、浄水施設、導送配水施設等における、水道施設の長寿命化事業、更新・再構築事業、並びに廃止施設(既に廃止した施設や大規模災害時の撤去事業を含む。)の撤去事業に対する財政支援制度を創設すること。
  2. 広域連携により近隣水道事業者(水道用水供給事業者を含む。)と連携し、施設の統廃合とこれに併せたバックアップ機能強化を図る事業に対し、制度的支援を確立すること。
  3. 導・送水管の更新に係るバイパス管等の整備に対する財政支援制度を創設すること。
  4. 水道施設の更新・再構築に備え、必要な更新資金をストックするためのルール化を図ること。
  5. 既存施設の共同化に伴う補助対象財産の財産処分について、承認条件の見直しを図ること。
提案理由

 水道事業者は、これまで増加する水需要に対応し、安全で安定した水道水の供給を確保するため、施設能力の増強及び基幹施設の整備を進めてきた。
 これら施設には、水需要が急増した昭和30年代から40年代にかけて建設されたものが多く、現在では、建設後相当年数を経過し、老朽化が進んでいることから、その多くが更新の時期を迎えている。
 更新・再構築に当たっては、人口減少等による水需要の減少を踏まえた施設規模の適正化、地震等の自然災害に対して強靱な水道施設の整備、病原微生物・有害化学物質等の新たな水質問題に対応した水質管理体制の強化や高度浄水施設の整備など、緊急かつ重要な課題への対応に加え、改正水道法を踏まえ、水道の基盤強化が求められている。
 しかしながら、これら課題等の対応を踏まえた施設の長寿命化事業、更新・再構築事業、並びに広域連携による施設の統廃合とこれに併せたバックアップ機能強化を図る事業等には、莫大な事業費を要する一方で、直接料金収入の増加につながらないため、その資金を水道事業者が独自で負担することは、事業経営に及ぼす影響も大きく、老朽化した水道施設の更新・再構築等を早急に推進することは極めて困難な状況となっている。
 また、令和2年度には生活基盤施設耐震化等交付金において、事業の縮小に伴う施設の統合整備を行う水道施設再編推進事業が創設されたが、対象事業は、限定的なものである。
 さらに、既存施設の共同化において、補助対象財産の共同化にあたって施設の有償譲渡や有償貸付等を行う場合には、各省庁の財産処分規定に基づき補助金等の国庫納付が必要となり、施設の再編成による広域連携の推進に影響を及ぼしかねない。
 よって、水道施設の更新・再構築事業に対する新たな財政支援体制等の確立を国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 関西地方支部の舞鶴市より提案理由が説明された。
 旭川市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

8.簡易水道事業統合等に対する財政支援について

提案地方支部:東北、関東、関西、中国四国、九州地方支部
要望事項

 統合により上水道事業が負担することとなる旧簡易水道施設の整備費等について、引き続き簡易水道事業繰出基準と同等の繰出基準を適用する等、必要な財政支援を図るほか、次の事項を実現すること。
①統合前の簡易水道の建設改良に要する繰出金について、旧簡易水道事業債の元利償還金に係る交付税措置は、臨時措置分も含めて統合後6年目以降も減額することなく継続し、従前の交付税の水準を将来にわたって維持する。
②旧簡易水道事業の高料金対策に要する繰出金については、統合後6年目以降も減額することなく継続され、11年目以降も継続する。
③統合前の簡易水道未普及解消緊急対策事業に要する繰出金について、統合後も繰出しの対象とする。
④簡易水道等施設整備費の採択基準の緩和及び補助率の引き上げを図る。
⑤旧簡易水道事業区域で実施する建設改良事業に充てる企業債元利償還金の2分の1が地方公営企業繰出制度の対象となったが、この繰出しに対する財源は一般財源と特別交付税であり、設置自治体の財政負担増大が懸念されることから、負担軽減のための制度改善を行う。

提案理由

 簡易水道事業の多くは、過疎地域や中山間地域・離島など地理的条件から施設の効率化には限界があり、また、既存施設の老朽化や水源の枯渇、水質悪化等の問題も山積し、運営基盤は脆弱なものとなっている。
 こうした中、国からは、既存の上水道事業の給水区域からの移動距離(道路延長距離)が原則として10km未満の地域にある簡易水道事業を統合する方向で指導がなされ、水道事業者は統合を鋭意推進しているところであるが、地理的条件から上水道への施設統合ができず、経営のみを統合するソフト統合となり、経営の効率化や運営基盤の強化等につながらない状況もある。
 さらに、簡易水道事業の多くは、国の財政支援や一般会計からの繰入れ、簡易水道事業債等を主な財源としてかろうじて収支均衡を保っており、こうした簡易水道事業を統合することは、独立採算制を基本としている上水道事業の健全な経営に支障を来す恐れがある。
 よって、上水道事業及び簡易水道事業の健全な経営を図るため、簡易水道事業統合等に対する財政支援を国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 中国四国地方支部の鳥取市より提案理由が説明された。
 旭川市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

9.省エネルギー・再生可能エネルギー設備の導入促進に向けた柔軟な制度運用ついて

提案地方支部:関東地方支部
要望事項
  1. 補助対象事業として工事発注を行えるよう、公募時期を早めるとともに、早期に交付決定を行うこと。
  2. 補助要件の緩和及び2か年を超過する事業の取扱いについて、弾力的な運用が可能となる補助制度を確立すること。
  3. 現在の支援制度に設けられている令和5年度までの時限を撤廃すること。
提案理由

 環境省では、平成25年度から二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金の交付を行っており、その補助対象事業には、厚生労働省連携事業として「上下水道・ダム施設の省CO2改修支援事業」があり、省エネルギー・再生可能エネルギーに係る施設等を整備する場合に補助金を交付している。
 この補助金は、非営利法人が補助事業者(執行団体)として環境省から一旦交付を受け、補助事業者(執行団体)が設置する委員会において審査を行い、エネルギー起源二酸化炭素の排出抑制のための技術等を導入する事業に対して交付される仕組みとなっている。
 この補助金を受けるためには交付決定日以後でなければ工事の契約等が行えないが、交付決定時期が8月上旬であるため、契約手続きや事業の工期等を考慮した場合、補助金を断念せざるを得ないこともある。
 また、2か年の事業の場合、1年目に出来高のないものは補助対象として認められないなど、制約が多い制度運用となっている。
 さらには、近年はPPP手法の導入による民間企業のノウハウを活用した浄水場等の更新を行う事例が増加しているが、PPP手法は複数年にわたる整備事業の工事請負契約を当初に一括して締結するため、対象となる施設・設備の工事は契約後数年を経てからとなる場合が多く、補助金の交付を受けるには課題の多い制度となっている。
 水の移送等に多大なエネルギーを要する水道事業における地球温暖化対策が社会的な要請となっている一方で、水道事業者は老朽施設の更新や耐震化に多額の費用が必要となり、省エネルギー・再生可能エネルギー設備の導入まで手が回らないのが現状である。
 よって、省エネルギー・再生可能エネルギー設備の導入促進に向けた柔軟な制度運用を国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 関東地方支部の神奈川県内広域水道企業団より提案理由が説明された。
 旭川市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

(起債・繰出関係)

10.起債融資条件の改善及び地方公営企業繰出制度の拡充等について

提案地方支部:北海道、関東、中部、関西、中国四国地方支部
要望事項

 起債融資条件の改善及び地方公営企業繰出制度における実効性の強化、安全対策事業、高料金対策等における繰出基準の緩和及び対象事業の拡充を図るほか、次の事項を実現すること。
①政府資金などによる安定した資金調達機能を維持するとともに、起債に係る利率の更なる引き下げを図る。
②一般会計出資債に係る地方交付税措置を拡充する。
③浄水場、配水池等の基幹水道構造物の耐震化事業について、耐用年数を経過した施設の更新・改築事業を対象とする。
④浄水場・管路等の更新事業、浄水施設覆蓋整備事業、既存施設の撤去事業並びに自己水源の一部を用水供給事業に転換するための施設整備事業を地方公営企業繰出制度の対象事業に加える。
⑤水道事業が担う水源涵養に係る取組を地方公営企業繰出制度の対象事業に加える。
⑥再生可能エネルギー電力調達に際して増額となる維持管理費用などの経費についても、地方公営企業繰出制度の繰出しの対象とする。
⑦消火栓設置に伴う水道管路の維持管理費用等について、明確な算定基準を示し、着実な一般会計からの繰出を図る。
⑧新型コロナウイルス感染症対策に係る水道料金の減免措置を行った結果、供給単価の下がった水道事業者に対して、地方公営企業繰出制度の繰出基準を緩和する。

提案理由

 水道事業においては、安全で良質な水道水の安定供給を確保するため、施設の建設・改良に多額の資金を必要とし、この財源の多くを起債に依存せざるを得ないことから、その元利償還金は水道財政を圧迫しており、水道事業の健全な経営に大きな影響を及ぼしていることに加え、人口減少社会においては、現行制度では自らの努力だけでは経営を維持することが困難な水道事業者が増加することが予想される。
 今後も、安全で安定した水道水の供給を確保するためには、水源開発を始め、老朽化した施設の更新、再構築事業や震災対策事業の推進等、施設の整備、さらには、広域連携の推進が不可欠であり、これに要する巨額な資金もまた起債に依存せざるを得ない実状にある。
 こうした中、地方公営企業繰出制度については、毎年度、総務省において、一般会計から公営企業会計への繰出しに関する基本的な考え方を示し、地方公営企業法に定める経営に関する基本原則の堅持と経営基盤の強化を図ることとしている。しかしながら、この繰出基準に沿った事業に係る経費であっても、実際の繰出金の拠出は、一般会計の財政状況によって左右されることが多く、必ずしも制度の趣旨が保たれているとは言い難い状況にある。
 一方、森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から、平成31年4月に森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律が施行され、また、令和元年度から森林環境譲与税の地方公共団体への譲与が開始された。次世代に豊かな水源林を引き継いでいくために、水道事業の担う水源林保全への理解促進や住民参加による植林活動などの水源涵養に係る取組は、極めて公益性の高い事業であり、まさに森林環境譲与税の使途に謳われている活動内容にも通じているものがある。
 また、「地球温暖化対策の推進に関する法律」により、地方公共団体において温室効果ガスの排出量の削減等のための施策の推進が責務とされており、水道事業においても環境負荷低減に係る取組を実施していく必要がある中、脱炭素化に取組むための建設改良に要する経費が地方公営企業繰出制度の繰出しの対象となったが、再生可能エネルギー電力調達に際して増額となる維持管理費用などの経費についても制度の対象とすべきであると考える。
 さらに、水道料金の減免措置を行った結果、供給単価の下がった水道事業者に対して、地方公営企業繰出制度の繰出基準から外すことなく、本来どおり繰出しを受けられるよう繰出基準を緩和するなど、現状の制度についても柔軟な対応が求められる。
 よって、水道事業の健全な経営を確保し、水道料金の高騰化を抑制するため、地域の実情等を踏まえ、起債の融資条件等を改善するとともに、地方公営企業繰出制度の拡充等を国等に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 中部地方支部の岐阜市より提案理由が説明された。
 広島市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

11.公的資金補償金免除繰上償還制度及び公営企業借換債制度の復活について

提案地方支部:北海道、東北、関東、中部、関西、中国四国、九州地方支部
要望事項
  1. 公的資金補償金免除繰上償還制度を復活すること。
    なお、制度の復活に際して、次の要件を緩和するとともに、手続きを簡素化する。
    ①許可要件となっている資本費、将来負担比率等の要件を緩和する。
    ②対象となる公営企業債の範囲を拡大し、年利率5%未満の企業債についても対象とする。
    ③貸付日の条件により対象外となった年利率5%以上の企業債について、優先的に繰上償還を実施する。
    ④繰上償還を行った財政融資資金の対象となっている事業に対する財政融資資金における新規貸付停止の要件を撤廃する。
    ⑤制度利用に当たって必要な財政健全化計画の策定及び申請手続きの簡素化を図る。
  2. 公営企業借換債制度を復活すること。
  3. なお、制度の復活に際して、次の要件を緩和するとともに、手続きを簡素化する。
    ①年利率3%以上の企業債を対象とする。
    ②償還年限については、施設の耐用年数に応じた延長を可能とする。
    ③民間等資金だけではなく、政府資金による借換債の発行を可能とする。
提案理由

 水道事業者は、起債を主な財源として水道施設の整備拡充を行ってきたため、その元利償還金が水道事業にとって大きな負担となっており、特に過去に借り入れた高金利既往債が、この負担を一層大きくしている。
 こうした状況の中、繰上償還については、政府資金は平成19年度から3年間、旧公営企業金融公庫資金は平成19年度から2年間、一定の経営改革を実施する地方公営企業を対象に補償金を免除する特例措置が講じられた。さらに、平成22年度から平成24年度の3年間についても制度の継続がなされ、財政上の負担軽減につながる非常に有用な制度であった。
 なお、平成25年度に限り、東日本大震災の特定被災地方公共団体を対象に補償金免除繰上償還及び借換債発行ができることとされたが、対象となる資金は年利率4%以上の旧公営企業金融公庫資金のみと限定的なものであった。
 また、平成30年度からは、令和3年度までの時限措置として、上下水道事業について公共施設等運営権の設定に係る実施方針条例の制定等、一定の要件を満たした地方公共団体に限り、補償金免除繰上償還が制度化されているが、これも限定的なものである。
 よって、水道事業の健全経営を確保し、水道料金の高騰を抑制するため、広く活用できる公的資金補償金免除繰上償還制度及び公営企業借換債制度の復活を国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 北海道地方支部の札幌市より提案理由が説明された。
 広島市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

Ⅲ.安定・安全の確保

(水源関係)

12.安定水源の確保及び水源施設における堆積土砂対策等の推進について

提案地方支部:関東、中部、九州地方支部
要望事項
  1. ダムにおける堆積土砂対策事業に対する国庫補助制度を復活すること。また、豪雨災害等で治水効果を発揮したダムに堆積する土砂については、治水・利水の用途に関わらず災害復旧事業の対象とするなど、財政上必要な措置を講じること。
  2. 流域水循環計画として認定された計画に基づき実施する事業については、交付金制度の明確化等を図るなど、さらなる施策推進に向けた措置を講じること。
  3. 水源流域内における森林保全のため、関係機関と連携した水源林保全事業を促進すること。
提案理由

 水道の根幹的使命の一つである安定給水確保のためには、安定した水源を担保する水源施設の存在が不可欠であるが、その建設には長期にわたる期間と多額の整備費を要する。このため、計画的かつ効率的な水源開発の推進が強く求められるとともに、整備されたダム等を良好な状態で管理運営することが必要である。
 こうした中、ダム上流域においては、多くの地域で森林の荒廃が問題となるとともに、所有区分毎に管理者が混在し総合的な治山・涵養事業の実施が困難な状況にある。さらに、近年、頻発する豪雨災害により、ダムにおける堆積土砂は全国的な課題となっている。
 また、水循環基本法の枠組みの中で策定される流域水循環計画の事業の推進により、関係機関との連携のもと、適正な水循環の実現及び水資源の保全を図ることも強く求められている。
 よって、安定水源の確保及び水源施設における堆積土砂対策等の推進を国に対し強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 九州地方支部の福岡地区水道企業団より提案理由が説明された。
 和歌山市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

13.水利権制度の柔軟な運用について

提案地方支部:東北、関東地方支部
要望事項
  1. 水利権の許可に当たり、水道事業者がこれまで投資して取得した水道水源(ダム使用権など)や水道施設を最大限有効に、かつ、安定して利用し続けられるよう、水需要見合いでの「水利権の減量」がなされないよう配慮すること。給水人口の減少及び広域連携の一施策としての施設の共同設置・利用等に伴う水道施設の規模縮小や統廃合をせざるを得ない場合にも、水質リスクの低減、水量の安定性、運用の効率性を踏まえたリスク管理型の水の安定供給のために既存の水利権の活用が十分に図れるよう配慮すること。
  2. 渇水時のみならず、地震等の災害時や大規模な水質事故時などにおいても、時間を要する水利使用許可の手続きを経ることなく、特例的に水道事業者間の水融通が可能となるよう配慮すること。
  3. 水利権の許可に当たり、工事時や緊急時のバックアップ分を考慮した水量が得られるよう、または複数の取水地点がある場合に、開発水量の範囲内でそれぞれ相互補完が可能となるよう配慮すること。
提案理由

 河川法では、申請者の水需要に見合った水利権が許可されるのが原則となっているが、全国的な給水人口の減少傾向、節水機器の普及や節水意識の浸透などにより給水量の減少が予想されるため、今後、水利権が見直しされることも懸念される。
 許可水利権を得ている水道事業者にとって、水利権は水道事業経営の根幹をなすものであり、既得の水利権水量を安定給水のための施設整備や水運用の前提としている。
 多くの水道事業者は水利権を確保するため、ダム建設等に多額の費用を投じ、それを最終的には水道使用者の料金から回収しており、水利権は、いわば水道使用者の財産とも言えるものである。
 また、水利権は厳格な手続きを踏んで許可されることから、河川法に基づく水利権制度では、渇水時の特例を除いて水融通は認められていない。
 地震等の災害や大規模な水質事故などの発生時には、社会経済的な損失の大きい減断水を回避するため、河川管理者においても河川法の原則の範囲で配慮がなされているところであるが、緊急時においては、特に水道事業者間における水融通が有効な方策と考えられるとともに、連絡管等により他の水道事業者と接続されている場合、減量または廃止される水利権の一部を他の水道事業者が活用することが可能となれば、水質リスクの低減、水量の安定化、運用の効率化においても有効な方策になり得る。
 さらに、広域連携の一施策としての施設の共同設置・共同利用、上流取水の促進という観点において、施設規模の縮小や統廃合に伴い、同施設に水利権の減量又は廃止が生じる場合に、その減量等される水利権を他の水道事業者が活用することができれば、広域化の推進による経営基盤強化への効果が期待できる。
 よって、水利権制度の柔軟な運用を国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 東北地方支部の八戸圏域水道企業団より提案理由が説明された。
 和歌山市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

14.既存ダムの洪水調節機能強化に向けた基本方針への対応について

提案地方支部:関東、九州地方支部
要望事項
  1. 治水協定や事前放流ガイドラインについて、損失補填や費用負担等、改善に向けた協議の場を関係省庁等と行えるよう調整すること。
  2. 事前放流の実施後に、貯水池の水位が回復せずダムからの補給による水利用が困難となる場合に備え、代替水源として河川維持流量の一時的な転用を可能とするなど、実害が生じないように河川管理者が予め対応策を定めておくこと。
  3. 治水協定の締結者には、農業用水利用者等のダムに権利を持たない利水者が含まれないことから、ダムからの補給による水利用が困難となる恐れが生じた場合は、河川管理者が関係利水者間の水利調整を行うこと。
  4. 事前放流後に水位が回復しなかった場合の損失補填の対象に用水供給事業者から受水する水道事業者を加えるとともに、利水者に特別な負担が生じた場合に備え、事前放流ガイドラインにおいて、現在、損失補填制度対象外となっているダムや関連費用についても、国の責任において適切に対応すること。
提案理由

 令和元年東日本台風等を踏まえ、水害の激甚化、治水対策の緊要性、ダム整備の地理的な制約等を勘案し、緊急時において既存ダムの有効貯水容量を洪水調節に最大限活用できるよう、関係省庁の密接な連携の下、速やかに必要な措置を講じることとされ、「既存ダムの洪水調節機能の強化に向けた基本方針(令和元年12月12日 以下、「基本方針」という。)」が定められた。この基本方針に基づき、全ての既存ダムを対象に検証しつつ、治水協定の締結、工程表等の各施策について具体的な検討が行われ、国管理の一級水系について、令和2年の出水期から新たな運用を開始するとともに、都道府県管理の二級水系についても、令和2年度より一級水系の取組を都道府県に展開し、緊要性等に応じて順次実行していくこととされたところである。運用方法などの基本的事項については、国土交通省の事前放流ガイドライン(令和3年7月)に定められており、事前放流による利水容量が従前と同等に回復しない場合で、取水制限の新たな発生や、その期間の延伸及び取水制限率の増加に伴い発生する利水事業者の広報等活動費用及び給水車出動等対策費用の増額分が補填されることになっているが、これらの対応は水道用水供給事業者から受水する水道事業者も行うことになる。
 水道事業者及び水道用水供給事業者は、これまでも水源確保のためダム開発事業に参画し、安定給水の確保に努めてきた結果、水道水が国民生活のみならず、社会経済活動を支える重要インフラとして広く定着してきたところである。
 近年、気候変動の影響による水害の激甚化により、流域に暮らす方々の安全確保が急務となってきている。一方で、降雨の期間が集中するなどして、河川の利水安全度の低下が見られるなど、ダムの貯留機能を最大限に活用した利水運用も余儀なくされているのが現状といえる。
 こうしたことから、治水協定や事前放流ガイドラインについて、損失補填や費用負担等、改善に向けた協議の場を関係省庁等と行えるよう調整するとともに、人命優先の観点から洪水調節機能の拡大に最大限協力しつつも、事前放流により水不足等の実害が生じないよう、安定給水確保のための基本方針への対応について国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 関東地方支部の東京都より提案理由が説明された。
 和歌山市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

15.特定多目的ダム供用開始後に要する利水者負担額の軽減について

提案地方支部:東北、中部、関西地方支部
要望事項
  1. ダムの維持管理等に係る負担金(特定多目的ダム法第33条)の軽減を図ること。
  2. ダムの所在市町村への交付に係る納付金(特定多目的ダム法第35条)の利水者負担額の軽減を図ること。
提案理由

 多くの水道事業者では、特定多目的ダム建設事業に参画し、安定的に取水するための許可水利権を取得している。
 しかしながら、特定多目的ダム事業の参画には、膨大な建設費用の負担に加え、ダム完成後は特定多目的ダム法第33条の規定に基づきダムの維持管理等に要する負担金及び同法第35条に基づきダムの所在市町村への交付金を支払うための納付金の負担を強いられるため、厳しい水道事業財政をさらに圧迫するものとなっている。
 よって、特定多目的ダム供用開始後に要する利水者負担額の軽減を国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 中部地方支部の長岡市より提案理由が説明された。
 和歌山市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

(水質関係)

16.水道水源における水質保全対策及び水質事故の発生防止の強化等について

提案地方支部:関東、九州地方支部
要望事項
【規制・基準関係】
  1. 水道原水を取水するダムや河川の上流域における産業廃棄物処分場等の建設に対し、規制を強化すること。
  2. 水道水源における農薬類など人の健康に影響を及ぼす項目やかび臭原因物質(2-メチルイソボルネオール及びジェオスミン)、浄水処理対応困難物質などの水道水質管理に影響を及ぼす項目について環境基準及び排水基準を早急に設定すること。
    また、シアン化合物など排水基準において有害物質として設定されている項目について規制を強化すること。
  3. 水道水源に着目した農薬の適正使用に関する規制等の施策について、引き続き強化・充実に努めるとともに、使用実態に関する情報の提供に配慮すること。
  4. 水道水源の富栄養化防止のため、引き続き、窒素、リンの排水規制を強化すること。
  5. トリクロロエチレンなどによる水道水源の地下水汚染の原因を詳細に調査し、工場・事業場由来の汚染に対しては監視・指導を強化すること。
  6. ホウ素及びその化合物の水質基準値について、安全性の視点を持ちつつ、WHO飲料水水質ガイドラインで示される評価方法等も含め最新の知見を参考に見直しを行うこと。
  7. 水質異常時における摂取制限を伴う給水継続の考え方について、各水道事業者等が統一した見解をもって対応できるよう、給水継続に係る判断基準となるガイドラインを示すこと。
  8. 「浄水処理対応困難物質」等の健康への影響が予想される項目について、化学物質の管理強化として、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善促進に関する法律」による化学物質排出移動量届出制度(PRTR)特定化学物質への指定拡大等を行うこと。
  9. PFOS及びPFOA等の有機フッ素化合物の使用抑制及び規制を行うこと。
【事業実施関係】
  1. 良質な水道原水が確保できるよう生活雑排水対策の推進等による水質保全対策を強化するとともに、水源河川流域の下水道・合併処理浄化槽・し尿処理施設・農業集落排水事業の推進及び処理の高度化を図ること。当面は、アンモニア態窒素の硝化促進など、既存の下水道処理施設の運用による対策を推進すること。
  2. 畜産業における排水のクリプトスポリジウム等原虫類対策として、公共用水域へ排水する畜産由来の汚水に係る排水処理施設整備を推進すること。
  3. 水道原水を汚濁河川の直接的な影響から守るため、水道事業者等の取水地点よりも下流に汚濁河川水を導く流水保全水路などの整備を推進すること。
【調査・研究関係】
  1. 微量有機物質及び農薬等の化学物質の使用実態、安全性等に関する調査、研究等をさらに推進すること。
  2. 水道水源のクリプトスポリジウム等原虫類について、生態・感染性・不活化・簡便な試験方法に関する研究・開発を進めること。
提案理由

 水道事業者等は、常に安全で良質な水の安定供給という使命を果たすため、水道水源の水質保全や水質事故の発生防止について、日頃より細心の注意を払っているが、水源で水質汚染事故が発生すれば、取水停止や水源系統切替え、さらには給水停止や摂取制限等を余儀なくされる場合もあり、住民の生活に多大な影響を及ぼすことが考えられる。
 これまで、水道水の水質基準の改正はもとより、環境基準、排水基準などが強化され、水道水源の水質保全に関する法令が整備された。しかし、生活雑排水の流入や富栄養化に伴うかび臭等による異臭味の発生、浄水処理工程で水道水質基準物質に変化する規制対象外の物質やPFOS、PFOAを始めとする新たな化学物質による水質への影響など、水質に関する問題が山積している。また、水道水源地域に産業廃棄物処分場が進出しており、水道原水の汚染や水源涵養地の保水力低下が懸念されている。搬入される廃棄物の安全性の確保や浸出水漏洩時の対策、事業廃止後の浸出水処理施設の稼働期間が着目される中、これらは水道事業者等にとって重大な危害因子であり、浄水処理に多大な影響を与えるだけでなく、水道水に対する信頼性の低下や処理コストの増加などの大きな要因となっている。
 水源水質の問題は広域的、専門的な内容であることから、水道事業者等が安全で良質な水道水を安定的に供給するためには、国が水源保全について一層の規制強化を図るとともに、水質事故の発生防止や水源の水質改善に対してより具体的な対策を実施することが必要である。
 また、海水淡水化施設を導入している水道事業者等にとって、ホウ素及びその化合物の水道水質基準値は、浄水方法、施設の運用方法及び浄水コストに大きく影響する要因となることから、常に最新の知見及び安全性確保の視点を持ちつつ見直しを図ることが望まれる。
 よって、水道水源における水質保全対策及び水質事故の発生防止の強化等を国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 九州地方支部の北九州市より提案理由が説明された。
 横浜市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

Ⅳ.その他の重要事項

17.地下水利用等による専用水道に係る法整備及び対応について

提案地方支部:北海道、関東、中部、関西、中国四国地方支部
要望事項
  1. 地下水利用専用水道の実態を正確に把握するとともに、水質管理の徹底も含め、立入検査など適切かつ迅速な行政指導が行われるよう指針等について明示すること。
  2. 地下水保全も含めた健全な水循環、水道水質の安全性の確保、地下水の公共利用のあり方の観点から、これらを踏まえた水循環基本法の運用を図るとともに、水道事業の給水区域内における新規専用水道の設置規制等を含む新たな揚水規制について法整備を図ること。
  3. 専用水道の設置者及びその利用者に対し一定の負担を求めることができる仕組みの創設等、地下水利用に係る新たな施策を検討すること。
提案理由

 近年、水使用の合理化・経済性の観点から、地下水等の膜処理水と水道事業者が供給する水道水とを混合して給水する、あるいは、通常は地下水等の膜処理水を給水し、そのバックアップ用として水道水を使用するといった専用水道の設置が全国的かつ急速に拡大している。
 しかしながら、このような専用水道への移行は、地下水等の膜処理水と水道水との混合給水における水質管理の実態が不明瞭であるほか、水道水をバックアップ用として使用する専用水道の場合、通常時は水道水を使用しないことから配水管内に停滞水が発生しやすく、使用時に停滞水が専用水道に混入する場合がある。
 また、専用水道が水道水の使用を急激に増やした時に、配水管路内の圧力変動により、他の水道使用者に赤水などの異常が発生する恐れがあるという課題も抱えており、衛生上の観点からも看過できない状況にある。
 一方、こうした専用水道による地下水等の利用拡大がもたらす環境への影響も懸念されるところであり、これまでにも地下水の過剰なくみ上げによる地盤沈下を防止するために、工業用地下水のくみ上げ規制などが実施されてきた経緯がある。
 今後、専用水道による地下水利用がさらに拡大した場合には、再び地盤沈下が進行することも考えられ、環境にもたらす影響が懸念されることから、これを防止するとともに、公共性の高い貴重な資源である地下水の適正な保全のため、地下水の公共利用のあり方等を踏まえた水循環基本法の運用を図り、地下水の公的な管理に係る取組をより一層推進していく必要がある。
 併せて、このような専用水道の水源である地下水は、国や自治体等の財政投資や使用者の負担によって整備された雨水浸透施設等による地下水涵養の取組によってもたらされているものであり、極めて公益的なものであることから、一部の民間企業や特定需要者の利益のために利用されることは、国民の共有財産である地下水の利用の観点から公平性を欠くものである。
 さらに、地下水利用専用水道の導入によって、水道の使用量が非常に少なくなった場合には、水道施設に係る固定費の多くが未回収となり、その減収分が他の水道使用者に転嫁される懸念がある。
 よって、地下水利用等による専用水道に係る法整備及び対応を国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 北海道地方支部の恵庭市より提案理由が説明された。
 盛岡市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

18.配水管等の耐用年数の見直しについて

提案地方支部:北海道、東北、関東、関西地方支部
要望事項
  1. 配水管については速やかに耐久性等の検証を行い、材質・構造等に応じた適切な耐用年数へ見直すこと。
  2. 配水管以外の水道施設の有形固定資産の耐用年数についても、耐久性や最新技術動向の検証等を行い、個々の施設・設備に応じた適切な耐用年数に見直すこと。
提案理由

 近年、水道事業者においては、高度成長期に埋設された多くの配水管の老朽化が進み、本格的な更新時期を迎えている。
 更新に伴い布設する配水管については、東日本大震災の教訓を踏まえ、耐震性・耐久性に優れた新型管種を選択する水道事業者が多い中、現行の地方公営企業法施行規則では、配水管の耐用年数は一律40年と規定されている。
 しかしながら、近年の技術進歩により配水管の耐久性は大きく向上し、特にダクタイル鋳鉄管では100年という長寿命を目指した新製品も開発されており、一律40年と規定する現行の地方公営企業法施行規則は実態に沿わないものとなっている。
 また、配水管以外の水道施設についても、ポンプ設備は15年、監視制御設備等の計測設備は10年と規定されているが、これらについても技術レベルの向上や維持管理の適正化を踏まえた見直しを検討すべき時期に来ていると考えられる。
 耐用年数は、水道事業の費用構成の中で大きな割合を占める減価償却費に関係し、水道使用者から回収する水道料金の算定にも大きく影響を与えるものである。
 よって、配水管等の耐用年数の見直しを国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 関西地方支部の大津市より提案理由が説明された。
 盛岡市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

19.電磁式を含む水道メーターの検定有効期間の見直しについて

提案地方支部:北海道、東北、関東、関西、中国四国地方支部
要望事項

電磁式を含む水道メーターの耐久性等の検証を行い、検定有効期間を見直すこと。

提案理由

 水道事業者においては、平成23年4月から施行された計量法省令に基づき、計量精度の向上等を踏まえた新基準に対応した水道メーターへ平成30年度末までに順次移行した。
 新基準に対応した電磁式を含む水道メーターは、材質も環境に配慮したものへと改善されており、長期間の使用に支障はほとんど見られない状況である。
 しかしながら、現行の計量法に定める検定有効期間は従前のまま8年となっている。
 検定有効期間に基づく電磁式を含む水道メーターの購入及び取替に要する費用は、水道財政において大きな負担となっている。
 よって、電磁式を含む水道メーターの耐久性等の検証を行い、検定有効期間を見直すことを国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 北海道地方支部の石狩東部広域水道企業団より提案理由が説明された。
 盛岡市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

20.塗膜に含まれる低濃度ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物の処理等について

提案地方支部:中国四国地方支部
要望事項
  1. 塗膜に含まれる低濃度PCBの含有濃度基準については、常に最新の知見等及び安全性確保の視点を持ちつつ、見直しを図ること。
  2. 塗膜に含まれる低濃度PCB廃棄物の処理については、その処理が効率的かつ合理的に進むよう、処理対象塗料(膜)の明確化及び処理体制の充実・多様化を図るとともに、PCB含有濃度に係る調査及び処理費用に対する財政措置を講ずること。
  3. 塗膜に含まれる低濃度PCB廃棄物については、その処分量を踏まえた処分期限とすること。
提案理由

 平成31年3月28日付けで環境省より「低濃度ポリ塩化ビフェニル汚染物の該当性判断基準について」において、塗膜くずに含まれるPCBの含有濃度が0.5mg/kg以下となる場合は、低濃度PCB汚染物に該当しないと判断する旨の通知があった。
 一方、この含有量を超える低濃度PCB廃棄物は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法により政令で定める期間(令和9年3月31日)までの処分が義務付けられている。
 今後の全国的なPCB含有塗膜の状況把握の調査結果等によっては、全ての対象塗膜の期限内での処分の可否、また、処分場が限定されるうえに処理費用も高額であること等が、大きな課題となることが懸念される。
 さらに、塗膜除去を確実かつ適正に行う必要があるため、工法、工期に影響が生じることにより工事費も高額となる。
 よって、塗膜に含まれる低濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理等に関する検討及び財政支援措置等を国に対し強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 中国四国地方支部の松江市より提案理由が説明された。
 盛岡市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

21.管路更新時の既設管取扱に係る道路法第40条ただし書の運用について

提案地方支部:関東地方支部
要望事項

 道路法第40条第1項のただし書の適用範囲において、国土強靱化基本計画に掲げる「緊急的かつ重点的に進める国の施策にかかわる事業」に係る既設水道管の取扱いについて、道路管理者の裁量の範囲である旨明確に示すこと。

提案理由

 水道は国民生活に欠かすことのできない重要なインフラであり、国が策定した、防災・減災等に資する国土強靱化基本計画の見直しにおいて、重点化すべきプログラムに「上水道の長期間供給停止」が追加された。その主要施策の一つに「水道施設の耐震化の推進」が位置づけられており、全国の水道事業者においても優先すべき課題として、精力的に耐震化に取り組んでいるところである。
 こうした中、水道の普及率が飛躍的に向上した高度経済成長期に整備された管路が、順次更新時期を迎えており、水需要と料金収入が減少する厳しい事業環境にあっては、管路の更新に要する財政負担の増大が、特に中小の水道事業者にとって重い負担となっている。
 これに加え、昨今改正された道路法において、管路等を更新した際に不要となった占用物の取扱いが強化され、工期の長期化に伴う受注者の施工体制に影響が及ぶことが想定されるとともに、既設管の撤去に要する費用も重い負担となる。
 南海トラフ地震や首都直下地震の切迫性が指摘されるなど、水道管路の耐震化を早急に進めていかなければならない中で、こうした課題が、耐震化の促進を阻害する要因ともなっている。
 ついては、道路法第40条の趣旨を十分に踏まえた上で、既設管は十分な強度があり陥没等のリスクも低いことから、同法第40条第1項のただし書の適用範囲において、国土強靱化基本計画に掲げる「緊急的かつ重点的に進める国の施策にかかわる事業」に係る既設水道管の取扱いについては、道路管理者の裁量の範囲である旨明確に示すことを国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 関東地方支部の神奈川県より提案理由が説明された。
 盛岡市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

22.新型コロナワクチンの職域接種要件の緩和について

提案地方支部:関東地方支部
要望事項

職域接種の実施要件(500人)を緩和すること。

提案理由

 水道事業は、住民生活と経済活動にとって最も重要なライフラインである。水道事業者とそこで働くすべての従事者は、自らエッセンシャルワーカーとしての自覚と責任を持って、コロナ禍においても決して途切れさせてはならないという使命のもと水道事業の継続に努めているところである。
 新型コロナウイルスの感染防止対策にあたっては、強化、徹底に努めているが、感染力が強い新型コロナウイルス変異株の流行などにより、対応が長期に及ぶことが懸念されている。
 加えて、新型コロナワクチン接種を加速させるため、職域接種の実施要件が1会場あたり1,000人以上から500人以上に緩和されたが、全国の多くの水道事業者では職員数が500人を下回る状況であり、また、当該理由により職域接種を受けられない近隣の水道事業者との合同接種の取組も困難な状況にある。
 よって、水道水の安定給水の確保に向け、新型コロナワクチンの職域接種要件の緩和を国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 関東地方支部の神奈川県内広域水道企業団より提案理由が説明された。
 盛岡市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

23.小規模集落等における多様な給水方法について

提案地方支部:中国四国地方支部
要望事項

管路やポンプ設備等による給水が困難な小規模集落等において、給水タンクによる給水等、多様な給水方法が可能となるよう、水道法上において検討すること。

提案理由

 水道事業は人口減少に伴う水道料金収入の減少や老朽化施設の更新需要増大など、厳しい経営環境が見込まれている中、近い将来、中山間地域や離島部の小規模集落等への安全で安定した供給が困難となる可能性がある。
 水道事業を取り巻く厳しい経営環境下において、小規模集落等へ水道水を給水することは、財政的及び人的にも負担が生じているところである。
 このような中、給水区域内において管路やポンプ設備等による給水が困難となる地域については、各家庭において給水タンクを設置し、水道水を運搬受水し給水する方法など、多様な給水方法が考えられるが、現行の水道法では、これらの手法を導入することができない。
 よって、小規模集落等における多様な給水方法が可能となるよう、水道法上において検討することを国に対して強く要望する。

補足資料
第101回総会における討議結果

 中国四国地方支部の香川県広域水道企業団より提案理由が説明された。
 盛岡市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。

24.危機管理の対応に関する仕組みづくりについて

提案地方支部:中部地方支部
要望事項
  1. 自然災害を除く危機事象への対応について検討すること。
  2. 危機事象に関する暫定的な連絡窓口を設置すること。
提案理由

 近年は「想定外」と言われるリスクが様々な分野で頻発しており、今後、経験したことのない新たな危機事象が、いつ発生しても不思議ではない。そうした事象に対応していくためには、時代の潮流にあった適切なリスクマネジメントを実践していくことが重要である。
 日本水道協会におけるリスク管理のルールとしては、既に「地震等緊急時対応の手引き」(以下、「手引き」という。)がある。
 この手引きは、阪神・淡路大震災の応援活動をもとに策定され、それ以後の地震災害での経験値を積み重ね、完成度の高い手引きとして全国の水道事業者にも浸透しているところである。
 しかしながら、この手引きは、基本的に自然災害を前提としたものとなっており、それ以外の危機事象は対象となっていない。
 こうした中、新たな危機事象が発生した時にも、日本水道協会と水道事業者とが連携し、迅速に対処できることが求められる。
 よって、今後は、自然災害以外で日本水道協会が主体となって関与すべき危機事象に対しても、迅速かつ統制のとれた対応ができるよう、統一的なルール作りや適切な時期の情報発信などを含め、危機管理の対応に関する仕組みづくりについて早急に検討すること、また、上記の検討期間中、不測の事態に備え、水道事業者との迅速な情報共有および連絡調整を目的とした暫定的な危機管理に関する連絡窓口を設置することを日本水道協会に対して要望する。

第101回総会における討議結果

 中部地方支部の津市より提案理由が説明された。
 日本水道協会事務局において、新たな危機事象が生じた場合の情報発信や情報連絡のルールについて、具体的な検討を進めていくこととなった。